虎になって

虎になっていきる、虎になって眠る

壁に耳あり

ご無沙汰、どうもしっぽだ。

中学生ぐらいだろうか、多感な時期のしっぽはこれ以上ない程の地獄耳で、教室の端から端まで会話が聞こえていた。当時のしっぽは、自分の名前や関連ワードその他諸々が聞こえる度に、そちらを気にし、にっこり微笑んで牽制、みたいな事をしていた。今思うと自意識過剰、かなり不気味で恐ろしい生徒だったと思う。今でも耳はいい方で、聞こうとしなくても他人の会話が聞こえてしまう事が多々ある。

ということで、聞こえてしまった会話で何か思う事があった時、なんとなく記事にしてみようと、そんな気持ちではじまりました新連載「壁に耳あり」。今回で打ち切りの可能性は、8割を超え9割に届こうとしている。

 

時間を潰す必要があり、なんとなく入ったMcDonaldでの会話だ。

季節限定のヨーグルトシェイクが吸えずにぶっさいくな顔を晒すしっぽ。その後ろで談笑する2人の女性、年はしっぽにかなりに近いと思われる。どうやら音楽の話をしているようだ。

A子「私は音楽、海外チャートから聴くいてるからな」

おお、洋楽の先輩かもしれない、しっぽはつい最近洋楽に手を出すようになったばかり、何か情報があるかもしれない。そう思い片耳だけにはめていたイヤホンをそれとなく外す。彼女らの会話は、あくまで聞こえているだけである。決して盗聴とかそういった犯罪の匂いのするものではない。

B子「私、最近洋楽でいい曲見つけたよ〜」

A子「え、なになに?」

しっぽ(何だろうか)

B子「This Is America って曲なんだけど〜」

しっぽに戦慄が走った。最近⁉︎グラミー賞とったの何ヶ月前だよ⁉︎

動揺するしっぽをよそにキャッチボールは続く

A子「へーその曲知らない、聴いてみようかな」

しっぽ「は?」

思わず声が漏れた。チャートどこいったおい。しっぽは、日本人が洋楽を聴かない、というのを強く強く痛感した。グラミー賞最優秀楽曲賞を受賞した作品であることは、当時洋楽を全く聴かなかったしっぽでも知っている。その知識を置いておいたとしても、それならさっきのチャート発言はどうなる?何の得になる嘘なのか、しっぽの中でざわめきが止まない。

A子「それでさ、その曲どこがすごいの?」

ああ、確かにそれは聞きたい。正直2回ほどしか聴いてないし、メッセージ性強い歌詞とMVだったよな確か……そんなうろ覚えのしっぽにとって、最近見つけたばかりのB子の感想は貴重なものだ。

B子「あー、あれね、すごいのよ!イヤホンで聴くと左右で音が違うの!」

粗品「それステレオっ!!」

思わず脳内の粗品が突っ込んだ。予想を大きく覆すステレオ技術の評価。しっぽは肩を震わせ、いやこれはネタになるな、そんな事を考えていた。

A子「へー、すごいねそれは」

粗品「いやお前もステレオ知らんのかっ!!」

もう、日本人が洋楽を聴かないとか嘆かれてますけど、そもそも日本人音楽まともに聴いてない説が浮上したところで、話題が変わり、彼氏云々の話になったのでイヤホンを両耳にねじ込み、フライングロータス「Never Catch me」を大音量で流した。シェイクはドロドロに溶けていた。